2009年8月の晴れた休日


河川でのバーベキューに呼ばれた。
車を目的地にまで走らせる。
どんどん民家が減って、緑が多くなってくる。
実家の近く、夏休みによく泳いだ河の景色とよく似ている。

ここだろうというところの川辺へ降りてみると
もうメンバーは皆集まっているようだった。
日光を避けるように橋の下で準備がされていた。

この「アウトドア研究会」なるものに、私も夫も初参加だったので
メンバーの方々に挨拶をする。
メンバーの中には家族で参加している人たちもいる。
中学生くらいの人が5、6人。よちよち歩きの子もいる。
みんなそれぞれ自分の「位置」を決めてあるようだ。

すでに料理は始まっていた。
参加者は20名程だったのだが、仕切る役のシェフがいて
その人が全て材料の準備から、料理のレシピから考えてくれているようだ。
周りは言われたことをやればそれでいいという雰囲気。

私たちが着いた時には若い女子がタコをぶつ切りにしていた。
切り終わるとシェフの指示で
オリーブオイルとパプリカをかけて、カルパッチョが出来上がる。
出来上がった側から、人が群がりすぐになくなっていく。
「ちょっとタコとっておいてね」とシェフ。

その隣で何やら大きな魚をさばいている。
水を張った容器に大きな昆布が浮かんでいる。
氷がいっぱい入ったクーラーボックスにジュース、お茶、お酒
好きに飲めるように近くに紙コップが置いてある。

男子達はやはり火起こし係。
石を組んで火を起こす。
夫は何かやっていた方が落ち着くタイプなので
仕事を探し、ちょこちょこと動いている。

火が起きたら網を張って、ソーセージを焼く。
だんだんと表面が焼けてきてぷちっとなり、油が落ちる。
真ん中に切り目を入れたパンがでてきて
そこに挟んでケチャップとマスタードをたっぷりつけてかぶりつく。

シェフはまだ魚をさばいている。
「本当はもっと大きなマグロを仕入れる予定だったんだけど
天候が悪くてこれしか手に入らなかった」と言っているが
それでも5キロ程の大きさ。
マグロの他にも、クーラーボックスには7、8匹の魚
これもみな30センチはある、が待っている。

荷物の中から、大葉、ツマがでてきて
大皿に刺身と一緒に盛りつけられる。
「これはマグロでこれは・・」と数種類の魚の盛り合わせ。

刺身をみんなで食べ始めていると
「あ。そうだすし飯あったじゃん。」
と大きなおひつにいっぱいのすし飯、海苔がでてくる。
海苔にすし飯、大葉、刺身を乗っけて手巻き寿司。
あまりやったことがないので分量がわからず
ただの海苔寿司乗せになって非常に食べにくいがうまい。

みんなが手巻き寿司を作って食べている間に
シェフは「玉ねぎとねぎとトマトをみじん切りにしてね」
と女子達に指示をしている。
魚をたたきにしてそれら材料と混ぜて
オリーブオイルと塩、胡椒で味をつけたものを作りつつ
「アボガドあったじゃん」と
アボガドとマグロと醤油を和えたサラダも作る。

ちょっと手が空いた女子達は
Tシャツの中に水着を来てきたらしく
河に入って、浮き輪で流れたりして遊んでいる。
きゃあきゃあという声が橋の下に反響する。

シェフの奥さんがカボチャを切り、
アルミホイルで包んだものを作ってきた。
火の中に入れて蒸し焼きにするらしい。

シェフが今度はそれは大きな素晴らしい鯛を登場させた。
「おぉ〜」という歓声。
今回のメイン料理の一つ。
「これを塩竈にする」という。
卵白を奥さんが泡立て、大量の塩と混ぜる。
鯛は水にひたしてあった昆布で全体を巻かれ、
アルミホイルの上で塩でがっちり固められる。
大きくて持つに苦労するも、火の中に直接入れる。

もう一つのメインであるイベリコ豚の固まりも登場する。
「ジャガイモを大きめに切って、オリーブオイルとローズマリーであえて」
という指示を受け、私も少し働く。
肉は強めに塩、胡椒をして
網の上に皮の部分を下にして乗せ、直火にかざして焦げ目をつける。
すぐに油が滴り落ちてくる。
いい感じに焦げ目がついたらダッチオーブンにジャガイモと一緒に入れる。
ダッチオーブンは一つでは入りきらないので二段重ね。
かまどに置き、蓋にも炭を置き、またもう一段重ねてその蓋にも炭を置く。

ジャガイモをオイルで混ぜた手を洗いに川の方へ歩いて行く。
水辺でじゃばじゃば手を洗う。
後ろでは人の楽しそうな話し声、水の揺らめき、肌に感じる風
足下には自分の影が輪郭をくっきりと。
ああ懐かしい。こういうの知ってる。と思う。

ふと目を上げると、橋の下の川の所で
シェフの中学生くらいの息子と、同じ年くらいの女の子が
膝くらいまで水に浸り、少しの距離を保ちながら
二人で歩いている。
橋の向こうから日が斜めに差し込んでキラキラした水面に
二人の影を作っている。

なんだかドキドキしながらぼおっと見ていると
女の子が男の子に川の水を少しすくってかけ始めた。
すると予想通りに男の子も同じことをする。
ただでさえキラキラしている水面がさらにはじける。

今、まさに「夏」という瞬間を見た気がした。

「だだだめだ・・眩しすぎる・・もう見ていられない・・」
と胸をきゅーんとさせながら夫のところへもどり
今見たことを報告する。
「それはヤバいね」
「なかったなあ・・私には、ああいう甘酸っぱいの」
と各々の過去を思い出したりしてみる。

メインの料理ができる間にも
カボチャが蒸し上がり
「はちみつとシナモンをかけて食べてね」
ほくほくもっちりのかぼちゃ。
「ピザ食べませんか?」
と七厘で焼かれたチーズがとろとろのピザ。
「クラッカーにつけて食べてね」と
モッツァレラチーズを熱して溶かしたものが出たり、
魚に塩をしてシンプルに網の上で焼いたものなどなどを食べる。
途中から参加の方々も登場して
「サーターアンダギー作ってきたけど食べませんか」
と紫芋色のとてもきれいなサーターアンダギーも頂く。

「そろそろ鯛ができたかもしれない」
とシェフが言うので男子たち数人係で火の中から
鯛の入ったアルミホイルを出す。
熱々のアルミホイルをはがし、固まった塩を壊して
張り付いた昆布を取ると、
とてもいい感じに蒸し上がった鯛が現れる。
「わあ〜」また歓声が上がる。
一口食べると、本当に絶妙としか言えないような塩加減。
鯛の味を一番引き立てるしょっぱさ。
あぁ幸せ・・

みんなで鯛に群がっていると
「そろそろイベリコもいいんじゃない?」
とダッチオーブンを開けてみる。
下の段が火に近過ぎたのか肉が少しこげてしまっていた。
切ると中はまだ生のまま。
「ああこげちゃった。火加減が難しいね。」
と今度は少し遠火にして、もうしばらく待つことにする。

待つ間にシメのパエリア作り、
「玉ねぎとニンニクをみじん切りにして。
解凍しているムール貝とエビの様子を見て。
取っておいたタコも出して。
パプリカがあるから切って。」
とシェフの指示に女子が動く。
直径70センチくらいあるパエリアパンが登場。
スペインに行った時に買ってきたらしい。
うまく火に乗るようにかまどの石の位置を調節する。
パエリアパンを熱して、オリーブオイルで玉ねぎとニンニクを炒める。
無洗米を入れて炒め、水とサフラン、コンソメキューブを入れる。
解凍されたムール貝、取っておいたタコ、エビを並べるがその量が多い。
シェフいわく「量を間違えて買っちゃった」ということで
エビで米が隠れるくらいびっちりと敷き詰める。
パプリカをちらして、アルミホイルを被せて蒸し焼きに。

イベリコ豚の様子を見てみると、やっと中まで火が通ったようだ。
油がダッチオーブンの下数センチも溜まっている。
シェフが肉を取り出し、サイコロ状にカットしていく。
切ったさきからどんどんなくなっていく。
肉はたべごたえがあって、まさに「美味しいにくを今!食べてます!」
という食感が口のなかいっぱいになる。
あれだけ油が落ちていたのに噛むとじゅわりと肉汁がいっぱいでる。
さらりとしたいい油の味。
その豚の油を吸ったじゃがいもも一緒に食べる。
美味しく無いわけがない。

この日私はいろいろな飲み物も飲んでいるのだが
この肉を食べた時に丁度冷えたコーラを飲んでいて
これがとてつもなくぴったりで「コーラ万歳!炭酸ラブ!」
と思ったのだった。

肉のうまさの余韻に浸っていると
パエリアが出来上がったようだ。
アルミホイルを外すと「おぉ〜」とまた拍手。
みんな各自の皿をもって並び始める。
「何だこれ、戦後の配給みたいだな」とシェフ。
ちゃんと切ったレモンも添えてくれる。
レモンをきゅっと絞って食べる。
食材達の出汁をお米が全部吸ってくれてある。
エビも大きい。
お腹がはち切れそうだったのにおかわりしてしまった。

全ての料理が出て、みんなが少しづつ片付けモードに入っていく。
最後に網の上に乗って焼かれていた、刺身を取った後の魚の骨の部分。
これが美味しくて私は最後までつついていた。
お昼前から食べ始めて、もう夕方近い。
洗えるものはあらって、ゴミをまとめて、
残ったものはタッパーにつめて、火を消す。

最後にみんなで集合写真を撮って、
シェフにありがとうごちそうさまの挨拶をして
車に乗り込む。

帰りの車の中
  「豪華だったね〜うちらのイメージのバーベキューと違ったね。
   定番の焼きそば〜とかなかったね!外なのに生ものいっぱい出たし。
   きっとあのシェフの息子は料理をする男になるに違いないね。」

大人の本気遊びの素晴らしさを知った一日だった。